前回は特定不妊治療の中でも、①体外受精(IVF)②顕微授精法(ICSI)の2つをご紹介しました。今回は③胚盤胞移植(Blastocyst Culture)と④配偶子卵管内移植法(GIFT)ついてご紹介します。
【③胚盤胞移植(Blastocyst Culture)】
体外受精や顕微授精の際、受精卵の培養は一般的に2日程度(初期胚移植)です。しかし、これを5日~6日程度培養することで、着床直前の「胚盤胞(100個程に細胞分裂)」まで育てることができます。この胚盤胞を子宮の中に戻すことを胚盤胞移植(Blastocyst Culture)と言います。
一般的な初期胚を使うよりも着床率は2倍以上になるとも言われています。
初期胚を何度子宮に戻しても妊娠しない場合や卵管に異常がある場合に有効です。
ただし、胚盤胞にまで発育する確率は30~40%程度と言われており、準備した受精卵が必ず胚盤胞になって移植できるとは限りません。
初期胚の移植の場合でも受精卵の移植数を増やせば妊娠率は上昇しますが、それと同時に多胎妊娠の可能性も高くなります。多胎妊娠はリスクを伴うことも多いため、移植数を1個に制限しながらも高い妊娠率を維持できる胚盤胞移植は、多胎妊娠を防ぐメリットもあるのです。
日本産科婦人科学会によると、体外受精治療で子宮に戻す胚の数を1996年に3個以内、2008年からは原則1個と提言されています。
(ただし、胚盤胞を1つしか子宮に戻さない場合でも一卵性双生児になる可能性はあります。)
さらに移植から着床までの期間が短くなることで、子宮外妊娠のリスクを低下させることができるとも言われています。
培養費や移植費が、一般的な体外受精や顕微授精と比べ追加で10万円前後かかるため、治療費は高額になります。
【④配偶子卵管内移植法(GIFT)】
体外受精と同様に排卵誘発などによって採取した卵子と精子を培養器内で混ぜ合わせ、受精する前に女性の卵管に移植する方法を配偶子卵管内移植法(GIFT)と言います。
(受精卵を卵管の中に移植する方法は接合子卵管内移植法(ZIFT))
受精は自然の場合と同じく卵管内で起こるため、より自然妊娠に近い形と言えます。
ただし、GIFT(ZIFTも)は卵管を使用するため、卵管に異常がある場合は実施できません。
これらの移植は一般的に腹腔鏡を使用して行われます(ミニラパラトミーという小開腹法でも可能な施設もあるようです)。
そのため移植の際に卵管周囲の癒着や卵管采の異常などを発見できる可能性もあります。とは言え、体に負担がある方法でもあります。
さらに、多くの設備や技術が必要となる手術でもあるため、この治療ができる施設は非常に少ないのが現状です。
次回は、精子・卵子・胚の凍結保存についてご紹介します。