前回は、不妊治療において初期ステップである一般不妊治療についてご紹介しました。今回は、次の段階である特定不妊治療(高度生殖医療による不妊治療)についてご紹介します。
【特定不妊治療(高度生殖医療による不妊治療)とは?】
特定不妊治療(高度生殖医療による不妊治療)は、
ART(assisted reproductive technology)とも呼ばれています。
自分の卵管以外を使用した方法、例えば「体外受精」、「顕微授精」、「胚盤胞移植」、「凍結胚移植」といった治療方法のことです。これらの総称がART治療というわけです。
現在では、年間5万人以上の赤ちゃんが、この高度生殖医療を通じて生まれているといい、実に約20人に1人にあたります。
このように、たくさんの命の誕生を支えている高度生殖医療について一つずつご紹介していきます。
【①体外受精(IVF)胚移植(ET)】
高度生殖医療として最も一般的に知られているのが、この体外受精(IVF)です。
体外受精は、卵巣から卵子を取り出し体外で精子とで合わせる技術です。一般的な体外受精では、卵子に精子をふりかけて、自然に受精させます。
その技術に加え、胚移植(ET)という技術を用います。胚移植とは体外で作られた受精卵を2〜5日間培養してから子宮に戻し、着床させることです。(一般的には2日程度)
卵子の採取は、以前は自然周期に合わせて行われていました。しかしその方法では少しでもタイミングがずれると採卵ができません。さらには、そのタイミングの予測が大変難しいものなのです。
そのため現在では、薬剤(排卵誘発剤)を用いて卵子を育てて採卵率を向上させ、排卵時期をコントロールできる刺激周期によって採卵を行う場合が多いようです。薬剤の使用は体への負担が大きいと言われています。
卵管の機能に障害がある場合に用いられることが多かった治療法ですが、現在では他の不妊理由の場合でも用いられています。
費用については保険適用外となり、1回で30万~50万円程度の高額な費用がかかります。
【②顕微授精法(ICSI)】
卵細胞質内精子注入法とも言われます。
①の体外受精では、体外で自然受精させますが、こちらは排卵した卵子に細い針で精子を直接注入する方法です。
この方法は、主に男性側に不妊の原因がある場合に用いられます。
体外受精か顕微授精かどちらで行うかは、精子の数(5万~10万個/ml以下の精子)、形状や運動率などを踏まえて決定します。他にも、卵子の状態やこれまでの経過もポイントとなります。
体外受精よりも技術を要するため、費用は体外受精よりもさらに高額の約50万~80万円程度です。
次回も続いて、特定不妊治療の方法をご紹介します。